「食前」と「食後」で、トレーニング効果はどう変わる? それぞれのメリット&デメリットを解説!

筆者がトレーナーとして日々さまざまな人を指導するうえで、一番多くもらう質問が運動のタイミングに関してです。
特に「トレーニングでカラダを動かすのは、食べる前と食べた後のどっちが効果的なの?」という日常の食生活とトレーニングの組み合わせ方に悩む人は少なくありません。

そこで今回は、食前と食後それぞれにトレーニングを行った場合のメリット&デメリット、さらに食前と食後のトレーニングで気をつけたいポイントも合わせてご紹介します。

「食前」にトレーニングするメリット

「食前」にトレーニングするメリット
まずは、「食前」にトレーニングするメリットから見ていきましょう。

・カラダを動かしやすい

食前にトレーニングする一番のメリットは、まずカラダの動かしやすさが挙げられるでしょう。
その理由として、自律神経の働きが大きく関係しています。

カラダは自律神経の働きによって、活発に動く部分が異なります。自律神経には「交感神経」と「副交感神経」があり、日中カラダを動かしている時は交感神経が、睡眠時やリラックスしている時は副交感神経が優位に働き、カラダのバランスを保っているのです。

そして、食事前のタイミングは交感神経が優位に働くため、いわば筋肉の活動スイッチがしっかり入っている状態で、カラダ全体も動かしやすく、トレーニングに最適な状況といえるでしょう。

・体脂肪を燃焼させやすい

食前のタイミングは、体内のエネルギーが不足している状態です。
最も早く使われるエネルギーである血中の“糖”や“脂肪酸”が不足しているため、空腹の状態でトレーニングすると、体脂肪を分解してエネルギーを生み出そうとする働きが早く起こるのです。
そのため、食前は体脂肪を燃焼させるダイエットなど、痩せるためのトレーニングを行う絶好のタイミングといえるでしょう。

「食前」にトレーニングするデメリット

「食前」にトレーニングするデメリット
メリットに続いて、ここからは、食前にトレーニングするデメリットについて見ていきましょう。

・筋肉が落ちやすい

食事前のトレーニングは、体脂肪が減りやすいというメリットがある反面、残念ながら分解されてエネルギーになるのは体脂肪だけではありません。食前は、体脂肪と同時に筋肉も分解されやすくなってしまうのです。

体内のエネルギー量が不足していれば、筋肉も分解されてエネルギーに変わります。
そのため、筋力アップを目的に筋肉量を増やそうと考えている人にとっては、食事前のトレーニングが原因で効果を低下させてしまう恐れがあるでしょう。

・トレーニングがいい加減になりやすい

食前にトレーニングをすると、場合によっては空腹感などで集中力が散漫し、その流れから早くトレーニングを終えたいという気持ちにかられ、回数や負荷ボリュームがいい加減になるリスクもあります。

また、特にダイエット中の方などは、過度な食事制限で痩せようとするため、食事を抜いてトレーニングに打ち込んだ結果、めまいやふらつきを引き起こしケガに繫がる危険もあり得るでしょう。

「食後」にトレーニングするメリット

「食後」にトレーニングするメリット
食前の次は、食後にトレーニングをするメリットについて見ていきましょう。

・筋肉をつけやすい

食後のタイミングは、食べ物によってエネルギーを補給した状態のため、筋肉を減らす心配をせずにハードなトレーニングに打ち込むことができます。

また、食後のタイミングは筋肉のもとになる栄養素を体内に補充されている状態のため、筋肉を肥大化させるうえでも最適なタイミングといえるでしょう。

・体脂肪を蓄積させない

食後のトレーニングは、インスリンの分泌を抑制させる働きが期待できます。

基本的に食事を摂ると血糖値が上昇します。この血糖値を引き下げるためにインスリンが分泌されるのですが、食後にトレーニングをすることで、おのずと血糖値を低く抑えることができますので、その結果インスリンの分泌も少なくて済むというわけです。

とある研究によれば、食前と食後に上昇した血糖値を比較した際、食前に運動した場合は18%であったのに比べて、食後に運動した場合は30%も抑えられていた、という報告データがあります。
つまり、血糖値の上昇を抑えるためには、食前よりも食後のトレーニングが効果的といえるでしょう。

そして、インスリンには血糖値を引き下げる役割がある反面、逆に体脂肪を体内に蓄積させる働きも持っています。そのため、インスリンの分泌を抑えることは、イコール体脂肪の蓄積を防ぐことにも繋がります。

また、インスリンの分泌が多すぎる状態が続くと、インスリンの効きが悪くなり、肥満や糖尿病の原因になるリスクが高まりますので気をつけましょう。

「食後」にトレーニングするデメリット

「食後」にトレーニングするデメリット
反対に「食後」のトレーニングには、どのようなデメリットがあるでしょうか。

・カラダが重く感じる

人間の自律神経は、食事によって副交感神経が優位に働きます。そのため、食後のタイミングは副交感神経が働き筋肉が動かしにくくなるというデメリットが挙げられるでしょう。

また、食べた直後はお腹に食べ物が溜まっている状態のため体重が重くなり、より一層カラダを動かしにくいと感じるかもしれません。
さらに食後は、メンタル的にもカラダを休めたい…という心理状態が働きやすく、トレーニングへのモチベーションが低くなってしまうリスクも考えられます。

・消化不良を起こすことも

食後のタイミングは、食べ物を消化しようと血液を胃や消化器官に集中させようとします。
その状態でトレーニングを行うと、内臓に集まっていた血液が筋肉に分散されてしまい、消化に必要な血液量が不足してしまう事態になります。

そして、血液の量が不足することで食べ物が上手く消化されず、胃もたれや腹痛など内臓のトラブルを引き起こしてしまう可能性も考えられるでしょう。
特に、普段から内臓が弱く消化吸収されにくい人は注意が必要です。

【結論】食前と食後、どっちが効果的なの?

食前と食後、どっちが効果的なの?
「食前のトレーニング」と「食後のトレーニング」それぞれメリット・デメリットを紹介しましたが、じゃあ一体どっちが効果いいの?と疑問に思った人もいるでしょう。

結論からいえば、食前と食後どちらにもメリット・デメリットがあり、どちらのタイミングがベストという答えはありません。

ただ、あえてトレーナーの視点でオススメするのであれば

・脂肪燃焼など減量・ダイエットを目的としている人は、「食前」
・筋肥大などカラダを大きくしたい人は、「食後」


というタイミングが良いのではないでしょうか。

とはいえ、できることならデメリットをなくして、メリットだけでトレーニング効果を最大限に高めたい!と思うのは当然のことです。
そこでここからは、「食前」と「食後」のトレーニングにおいて、それぞれのデメリットを解消するうえで気をつけるべきポイントをご紹介します。

「食前」のトレーニングで気をつけるポイント

「食前」のトレーニングで気をつけるポイント
食前のデメリットは、エネルギー不足による筋肉の減少です。それを防ぐためには、トレーニング前に必要なエネルギーを補給しておくことが大切でしょう。

もちろん、しっかりとした食事メニューではなく、軽食で十分。重要なのは、エネルギーとなる炭水化物を摂取することです。
お腹が軽く満たされる程度におにぎりやパン、ゼリーやバナナなどのフルーツ類を食べておき、トレーニング中のエネルギー不足を解消すれば良いのです。

また、トレーニング中は飲料水などに含まれるアミノ酸(BCAAなど)を摂取しながら行うと、エネルギー補給になり、筋肉の分解を防ぐことができるでしょう。

さらに、トレーニング後はできるだけ時間を置かずにタンパク質を中心とした食事をしっかり摂り、筋肉づくりの効果を高めましょう。

「食後」のトレーニングで気をつけるポイント

「食後」のトレーニングで気をつけるポイント
食べた直後のトレーニングは、モチベーションの低下や消化不良のリスクがあるため、できる限り避けたいところです。食後は、最低でも1時間はカラダを休めるようにしましょう。

食後から1~2時間もたてば、カラダも動かしやすくなります。エネルギーも充満している状態ですので、カラダ作りには最も適したタイミングになります。

そして、トレーニング後は軽食やプロテインなどを活用して、トレーニングで減少したエネルギーを補給することで、より効率的にカラダ作りを進められるようになるでしょう。

「食前」と「食後」それぞれのメリット&デメリットを理解しよう

日頃からトレーニングに励む人であれば、ぜひとも押さえておきたい、「食前」と「食後」による効果の違い。
基本的には、食前でも食後でも、トレーニング効果に大きな差はありません。人それぞれに生活スタイルがあり、実施しやすい時間帯もあるでしょうから、自分がトレーニングを行うタイミングのデメリットを上手く解消し、トレーニング効果を高めることに意識を向けましょう。

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この記事のライター
和田 拓巳
和田 拓巳
プロスポーツトレーナー歴16年。 プロアスリートやアーティスト、オリンピック候補選手などのトレーニング指導やコンディショニング管理を担当。治療院での治療サポートの経験もあり、ケガに関する知識も豊富でリハビリ指導も行っている。 医療系・スポーツ系専門学校での講師や、健康・スポーツ・トレーニングに関す...