姿勢の悪い人が鍛えておくべき「筋肉の部位」とは?【猫背・反り腰・左右のバランス改善に!】

皆さんは自分の姿勢、気になりませんか?「無意識に猫背の体勢になってしまう…」「歩いている時に片方の肩が下がっていると言われた…」など、姿勢が気になる人も多いことでしょう。

たとえカラダに痛みがない場合でも、姿勢の悪さは日常生活にさまざまな支障をもたらすものです。
今回は、姿勢が悪くなってしまう主な原因と、姿勢の悪化を予防・改善するために日頃から鍛えておくべき「筋肉の部位」についてご紹介したいと思います。

姿勢の悪さは、骨ではなく「筋肉のバランス」が原因!

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姿勢が悪くなる原因として、よく耳にするのが「カラダの歪み」や「骨がずれている」という言葉です。しかし、皆さんがイメージするように“骨がずれる”ことはまずありません。本来、骨と骨は靭帯という組織によってしっかり固定されています。もし、本当に骨がずれてしまっているのであれば、それは靭帯を損傷していることを意味するため、動くたびに痛みが生じるはずなのです。

では、姿勢の悪さとは一体何が原因で起こるものなのでしょうか。

◎姿勢を悪くする「筋バランス」とは?

ほとんどの場合、姿勢の悪さは骨が原因ではありません。「筋肉」が原因で生じるのです。

カラダの内部には、意識して動かすことのできる骨格筋が約400個あるといわれています。
実はそれら多くの筋肉には、お互いに本来の働き(役割)とは逆の拮抗する筋肉が存在します。たとえば、“肘を曲げる筋肉である上腕二頭筋に対して、肘を伸ばす筋肉である上腕三頭筋”、“膝を伸ばす大腿四頭筋に対して、膝を曲げるハムストリングス”などが挙げられるでしょう。
これらの拮抗する筋肉や左半身・右半身、上半身・下半身の筋力や柔軟性の違いによって、姿勢が崩れてしまうのです。

これらのバランスのことを「筋バランス」といいます。
筋バランスには、カラダの前面・後面のバランス、左半身・右半身のバランス、上半身・下半身のバランスがあり、特にプロのスポーツ界隈では、それぞれをバランス良く整えることが、ケガを予防するうえでも重要とされています。

筋肉のバランスを崩す日常生活のクセ

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筋肉のバランスが崩れてしまう原因の多くは、日常生活において気づかないうちにカラダに染みついているクセによって起こります。皆さんもこんなクセがないかどうか、一度チェックしてみてください。

●座る時に脚を組む

仕事中や電車の中など、座っている時に脚を組んでしまう人は多いのではないでしょうか。左右同じくらいの頻度で脚を組むのであれば問題ありませんが、人によって組みやすい側面があるはず。このクセは、同じ方の脚を組み続けることによって、股関節周りを中心に、背中全体の筋肉のバランスを崩してしまいます。

●カバンを持つ時に左右が偏る

通勤時のカバンやプライベート時のバッグを、いつも同じ方の手で持ったり、肩にかけたりしていませんか?
カバンを持ち歩く際は、無意識的に左右どちらかに偏ってしまう人は多いもの。
いつも同じ側面でカバンを持つクセのある人は、自然と左右のバランスが崩れやすくなります。

●立つ時に同じ方へ体重を乗せる

その場にじっと立っている時の姿勢も要チェック。カバンを持つ側面が左右どちらかに偏ることと同じく、立った際も左右どちらかに重心が傾いてしまう人は少なくありません。このクセも筋肉のバランスを崩す原因になります。
また電車やバスに乗っている際、片手でつかんだつり革に体重をかけてカラダを支える行為も、筋肉のバランスを崩す原因になりますので気をつけましょう。

●座る時に姿勢が丸くなる

イスへ座った時に背中の姿勢が丸まっている場合、猫背の原因でもある骨盤の後傾が進み、筋バランスの悪化とともに猫背の姿勢がどんどん加速していきます。そしていつの間にか、猫背の丸まった姿勢の方が心地よく感じるようになり、日常生活のクセとしてカラダに染みついてしまうのです。
そうならないためにも、普段からイスに腰を掛ける際は、背中を真っ直ぐに伸ばすことを心掛けましょう。

姿勢のバランスを整える「抗重力筋」とは?

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姿勢の悪さを予防・改善するためには、筋肉の強化が必要です。もちろん全身を鍛えることによって筋肉のバランスを整えるのが一番望ましいのですが、そんなに鍛えられないよ…という人のために、ここだけは特に鍛えておくべきという部位をご紹介します。

◎重要なのは「抗重力筋」

姿勢のバランスを整えるために鍛えておくべきは、“抗重力筋”と呼ばれる筋肉たち。
そもそも姿勢のバランスが崩れてしまう根本的な理由は、私たちが地球の重力を常に受けているからです。重力に対抗して立ったり座ったり、または歩いたり走ったり飛んだりと、カラダのバランスを保つ働きをしているのが「抗重力筋」と呼ばれるもの。

抗重力筋は、常に重力に対抗して休むことなく働いているといえます。そのため、もともと強い筋肉なのですが、その強い抗重力筋が弱くなってしまうことで、重力に対抗してベストな体勢がとれなくなってしまうのです。

正しい姿勢を保つためには、抗重力筋の中でも特に「背中」「お尻」「太もも」、それに加えて「腹筋」の部位をしっかり鍛えておく必要があるのです。

姿勢の悪化改善に鍛えておきたい筋肉の部位①|背中

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まず抗重力筋の一つが背中。姿勢のバランスを予防・改善するためには、特に「広背筋(こうはいきん)」と「脊柱起立筋(せきちゅうきりつきん)」の部位が重要といえるでしょう。

中でも脊柱起立筋は、背骨の両脇についているため姿勢を真っ直ぐ保つためには必要不可欠な筋力。
この脊柱起立筋は、たとえば重い荷物を持つ時などにも力を発揮し、普段の日常生活において自然と鍛えられる部位のためそこまで弱くなりにくい筋肉ですが、その分疲労が溜まりやすく、柔軟性が低下しやすい筋肉なのです。

姿勢の悪化改善に鍛えておきたい筋肉の部位②|お尻

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立った時の体勢維持に重要な役割を果たしているのが、お尻の筋肉。お尻の筋肉である「大臀筋(だいでんきん)」が衰えることで、立ち姿勢に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、この大臀筋は歩行時に体重を支持する働きも担っているため、大臀筋の筋力が衰えることで歩く姿勢にも影響を与え、悪い歩行姿勢が更に姿勢を悪くするという悪循環を生み出します。

姿勢の悪化改善に鍛えておきたい筋肉の部位③|太もも

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太ももの前側にある筋肉「大腿四頭筋(だいたいしとうきん)」も抗重力筋の一つ。この大腿四頭筋も生まれつき強く、また日常生活を過ごす上でも動かす頻度が多いため、あまり弱まる心配はいりません。
しかしその分、硬くなりやすく柔軟性が低下することで骨盤の前傾を引き起こし、姿勢が崩れたり腰へのストレス負荷がかかりやすくなるなど、悪影響を引き起こす可能性があります。

さらに大腿四頭筋に拮抗する筋肉である「ハムストリングス」は、抗重力筋ではありませんが、大腿四頭筋に比べて衰えやすく、ハムストリングスの筋力が弱くなることで大腿四頭筋との筋バランスが崩れやすくなってしまいます。
そのため、太ももの中でも特にハムストリングスの部位を念入りに強化することが姿勢改善に役立つでしょう。

姿勢の悪化改善に鍛えておきたい筋肉の部位④|腹筋

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正確にいえば腹筋の部位は、抗重力筋ではありませんが、腹筋も姿勢を保つために極めて重要な筋肉。
お腹の正面にある「腹直筋(ふくちょくきん)」、ウエスト部分にある「外腹斜筋(がいふくしゃきん)」と「内腹斜筋(ないふくしゃきん)」、そして深部にある「腹横筋(ふくおうきん)」の筋力を鍛えておくことで、腹筋の圧力“腹圧”を高めることができ、背中の背骨を安定させ結果的に正しい姿勢を保つことに役立ちます。

また、骨盤の中にある「腸腰筋(ちょうようきん)」も抗重力筋の一つ。腸腰筋の筋力が衰えることで、歩幅の間隔が狭くなるなど、歩く時の姿勢バランスに悪影響を及ぼします。
さらにこの腸腰筋は、柔軟性も低下しやすい筋肉ですので、筋力アップを図ることと同様に、普段から定期的に腰を動かし柔軟性の向上にも意識を向けましょう。

姿勢の予防・改善には「筋力アップ+ストレッチ」の組み合わせが、効果絶大!

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姿勢の悪さは、筋肉を鍛え筋力アップを図ることである程度の予防・改善は期待できますが、その筋トレにプラスして柔軟性を高めるストレッチを取り入れることをオススメします。

特に前述で紹介した「「抗重力筋」と呼ばれる筋肉の部位は、常に力を発揮して働いているために緊張が強くなりがち。そのため姿勢の乱れや崩れは筋力アップだけの補強ではなく、柔軟性のアンバランスも大きく影響してしまうのです。
たとえば、胸の筋肉が硬く縮まってしまえば、肩が内側へと入り猫背の姿勢を招く原因になります。正しい姿勢を保つためには、筋肉を鍛えることと同時に柔軟性も必要不可欠なのです。

そして柔軟性を高めるためには、なんといってもストレッチが効果的。また筋トレができない日でも、ストレッチなら自宅で手軽に実践できるはずです。
特に就寝前など1日が終わるタイミングには、抗重力筋を中心にストレッチをおこない、筋肉の緊張を和らげておきましょう。

さまざまな筋肉の部位が影響しあうことで、日々姿勢は変化し徐々に悪化していくもの。猫背や反り腰、左右で異なるバランスの偏りなど、姿勢の悪さは、筋肉を鍛え筋力アップを図ることに加えて、ストレッチによる柔軟性を向上させることで改善が期待できます。

また姿勢の悪化もカラダ作りと同様に、短期間で改善するものではありません。長期的に筋肉を刺激すること、そして日常的な意識改革が必要です。
立った時、歩く時、イスに座った時の姿勢が気になるという人は、筋トレやストレッチなどを日課にして、正しい姿勢を身につけましょう。

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この記事のライター
和田 拓巳
和田 拓巳
プロスポーツトレーナー歴16年。 プロアスリートやアーティスト、オリンピック候補選手などのトレーニング指導やコンディショニング管理を担当。治療院での治療サポートの経験もあり、ケガに関する知識も豊富でリハビリ指導も行っている。 医療系・スポーツ系専門学校での講師や、健康・スポーツ・トレーニングに関す...