好きなことを、自由に、ちゃんとやる。~株式会社ドレスイング代表 ナカヤマン。インタビュー!~

マーケティングキャリアを背景にするデジタルクリエイターであり、ファッション・美容業界に特化するデジタルエージェンシー(株)ドレスイング(日本)、サプールインク(シンガポール)の代表 ナカヤマン。社長。会社員を経て起業、現在に至るまでのエピソード、事業内容、オフの過ごし方などをインタビューしました!

「欲しい仕事」は創る

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photo by Hannah Eto

Q まず、はじめにご経歴から教えていただけますでしょうか。

大学卒業後、カーオーディオ・カーナビゲーションのメーカー、クラリオン(株)に就職しました。大学では理系専攻だったのですが“0(ゼロ)”から“1”を作る仕事がしたくて、推薦ではなく商品企画志望で就職活動をしていました。クラリオンの入社直後に配属されたのは営業企画部でしたが、1年以内に希望部署に異動。そこまでの紆余曲折も全て、人事のストーリー通りだったらしいです(笑)

Q 商品企画というと、会社の花形で華やかなイメージがあるのですが、実際に異動してみてどうでしたか?

「企画」と付いても会社員の仕事ですから、地味で泥臭い仕事ばかりです。引き継がれたのは、前年度商品からの仕様調整や、開発日程の調整、量販店の要望との調整など華やかとは言い難い仕事ばかりでした。今となっては全て疎かにできない「基礎」だと分かりますし、必要なスキル習得だったとは思いますが、まあ間違いなく地味ですよね。

そもそも「華やかさ」の性質も含めて、個々が望む仕事が、予め社会に用意されている訳はないと思います。ですからボクも自分で作り変えました。自分が思うように華々しく(笑)。宣伝部も営業部も理解できないようなニッチな商品を企画して、一人で全部やるから宣伝予算を個人に付けて欲しいと本部長に直訴しに行ったり、その予算でテレビ番組作ったり。欲しい業務を巻き取っていましたね。

Q なるほど(笑) それで他の部署の人や宣伝に関わっている人たちから反対はなかったのですか?

無い訳ないじゃないですか(笑)。会社が望む結果と、そこまでの過程をごまかせるキャラクター。この二つが確立できるまでひたすら努力しかないです。努力というかケンカというか、、そこまでは「あの若造は駄目だ」とも「お前は引っ込んでろ」とも言われました。絶対にひっくり返してやると思いながら必死にやってましたよ(笑)。

「勘違い」も推進力

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Q その後、独立されたわけですが、何かきっかけがあったんでしょうか?

因を辿ると、会社から行かせていただいたビジネススクール「グロービス」で「マーケティング」に出会ったことですね。ロジカルシンキングやマーケティングをそこで初めて訓練するのですが、ボクの性質とすごく相性が良かった。その後、クラリオンのワールドワイド・ブランドマネージャーに任命いただいて実務経験も積めたので、次のフェーズに行きたいなと思い始めました。

マーケティングやブランディングの仕事で生きて行こうと決めたので、独立するタイミングでファッション業界に移りました。競合が5社しかないカーオーディオ・カーナビゲーションの市場に比べて、ブランドが乱立するファッション業界は挑戦し甲斐のある場所に思えたんです。あと、どうせ24時間仕事のことばかり考えるのなら好きなことを仕事にしたいと。独立前からファッションショーのVJ(ビジュアルジョッキー)としても活動していたので、モデルやデザイナーの友達も多かったし、友達のブランドからグラフィック製作の仕事などを打診されていたことも背中を押してくれました。あとはしっかり「勘違い」していたことが大きかった。

当時のボクが思うマーケティングとは、情報と思考を組み合わせて、狙い通りの状況が生まれるかどうかのゲームでした。だからこそ、より複雑なゲームを望んでいた。ブランドの多様さはゲームの難易度を上げてくれる。小さな的にしっかり当てる経験を積み重ねることで、自分の腕前を磨きたがっていただけかもしれないですね。若者らしくしっかり自惚れてもいたし、少し行き過ぎて仕事ジャンキー染みてもいたと思います(笑)。でもその「勘違い」が独立の推進力になったことは間違いありません。

Q 理想と現実のギャップはありますよね。その時のモチベーション維持は何か工夫されてましたか?

モチベーションなんて維持できなかったです。当然ですが、独立してすぐに「勘違い」には気付くことになるわけです(笑)。半年は全然食えてなくて、ただの酒乱でしたよ。毎日八時間飲んでました。独立直後から友達のブランドの机を間借りしてたんです。タダで。オフィスと店舗が併設されていたので、閉店近くになると誰かがビールを持って遊びに来るんですよね(笑)。そこから皆で出掛けて翌朝まで飲む。仕事はないし、暇だし、半年それを繰り返してました。退職金は初めの1ヶ月の飲み代で無くなるし、本当に金もなくて。半年経つ頃にはストレスがMAXで、飲んで暴れたり号泣したりしてましたよ(爆笑)。でも、もはや前に進むしかない状況じゃないですか。

半年経った頃、兄貴分からご紹介を受けたクライアントにファッションショーのプロデュースの仕事をいただきました。纏まったお金を頂戴したのはそれが初めですね。そこから徐々に何とかメシが食えるぐらいの稼ぎは出てきて、独立から2年後に法人化することになりました。といっても今の話は相当端折りましたけど、んーまあキツかったです(笑)。

ファッション×SNS

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Q 今のメイン事業は何になるんですか?

SNSを使ったデジタルクリエイションです。納品物で言うと、Webとかアプリとかイベント用のデジタルコンテンツとかですね。以前はSNSのコンサルティングが中心でしたが、2012年後半からは今の業態です。

ツイッターが流行り始めた2011年、白旗を上げるブランドさんがたくさん出ました。ブログは何とか乗り越えて来たけど、ツイッターは分からないと。そういう要望にお応えする形で、年間契約のコンサルティングコースを設立したんです。1ブランド目のクライアントであるMURUAさんの事例が新聞に掲載されて、そのコースに依頼が殺到しました。それ以降はファッション業界でSNS関連なら、とりあえずドレスイングに聞いとけ、という感じでざっくばらん過ぎる相談をたくさん頂ける様になりました(笑)。

一方で2012年の後半から、ひとつのSNS上でどう立ち振る舞うかよりも、SNSを絡めて何を行うかの方が求められる様に変わってきたんです。市場形成が進んだという意味でもあるし、既存クライアントが次のフェーズに進んだという意味でもあります。加えて同時期、ハイブランドもプロモーションにSNSというキーワードを求めるようになったんです。大半のハイブランドは本国アカウントしか持たないので、SNSアカウントを使わずにどうやってSNSキャンペーンをするかが課題になりました。これらの要素を受けて「製作を伴う戦略立案」という今の業態に着地しました。こういう経緯もあり、インスタグラム絡みの依頼もかなり早期に頂きました。2014年春に立ち上げたGUさんの「GU TimeLine」というデジタルキャンペーンがインスタグラム事例の一つ目になりますが、インスタグラムの成功事例として日経の一面にも掲載されました。

Q ファッション関連のお仕事だと、いろいろなブランドものに触れる機会が多いと思うのですが、こだわりのあるブランドとかお気に入りのスーツとかはありますか?

ブランドはシャネルとサンローランが好きです。特に決めている訳ではないのですが、5ブランド程度しか選択肢が無い気がします。たくさん買うタイプでもないですし、そもそも同じ場所しか行かないのでそうなってしまいます。本当に限られた場所にしか行かないんです。過剰に効率を求めるから。恵比寿、中目黒、渋谷、青山、六本木しか行かない。新宿は遠いし怖い。新宿に行くくらいならニューヨークに行きたい。新宿に行って中途半端に効率が壊れるくらいなら、ニューヨークで非日常を非効率的に経験する方がいい。そうすれば逆に、経験という効率は上がるので別の価値が出てきますよね。非日常という意味では着物を着ることも大好きです。違う経験が得られます。

Q すごい行動範囲狭いですね(笑) オフの日とかは何をやられてるんですか?

オフは特にないです。スイッチを切るのが怖くてできないです。あと5日働いて2日休むというルールの意味が理解できないです。逆に皆さんが休日にやることも平日にやります。髪切ったり、映画行ったり、美術館行ったり。その方が効率がいい。だからここ数年ちゃんとしたデートをしたことがないです。丸一日分の約束をするというのがイメージできない。デートってどうやるんだっけ?と秘書に聞いたりしたこともあります(笑)。

「自由」は簡単に手に入る

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Q ナカヤマン。さんはサラリーマン時代も含め凄く自由な生き方をされているなと思うのですが、いま働くことに悶々としてる方にアドバイスできることはありませんか?

まず権利と義務をしっかり理解すべきです。そうすれば、そもそも自分が考える都合の良い状況、自分の求める仕事が世の中に予め用意されている可能性なんて無いと理解できる。その上で自由を求める人には、それに呼応するリスクを受け入れる覚悟が無ければおかしい。基本的には世の中から完全に逃げることはできないから、自由に生きる分、誰かに何かしらの責任を果たすことになると思います。例えば仕事で結果をコミットすることもその一つです。

僕は会社員を経て独立していますが、会社員の時にチャレンジできない人が、会社を辞めた瞬間チャレンジできるとは思いません。小さな自由に対して小さな責任を果たせない人が、大きな自由に対して責任を果たせるのでしょうか?未だ出会っていない都合の良い状況が世の中にあると思っていないでしょうか?

とは言え、ボクは世の中が厳しいものだとは全然思っていません。本当の意味で責任さえ果たしていれば、ダメ人間な部分はおもしろがって受け入れてくれる人の方が多いです(笑)。完璧さを求める話とは違うし、完璧さを一番語る権利がないのはボク自身ですから(笑)

自由を手にいれる為の「責任」を背負い込むのも簡単。例えばボクは、昔から「言っちゃった⇒やらなきゃならない」で無理やり回してます。真面目でも、努力家でもないので、やらなきゃならない状況に自分を追い込む。ちゃんと責任感が出るところまで自分を追い込んでみてください。そういう状況が生まれてから必死でやっても何とかなるものです。死にはしませんよ(笑)

新入社員時代から自分のやりたい仕事をはっきり宣言して、期待される以上の成果を生み出し、自分に合わないパソコンは使わないなど、好き嫌いもはっきり伝えていたというナカヤマン。さんは、やはりなるべくしてなった起業家タイプ。生き方/考え方に自由さや派手さを感じる反面、自己責任力の強さを感じました。自分を曲げず、周りをグイグイ巻き込んでいく個性派経営者が次に進んでいく先には、どんな世界があるのか楽しみです。

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この記事のライター
MENDY journal
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