なぜ「ダウンジャケット」はここまで浸透した?年代別に振り返る進化の足跡

冬のアウターの中で最も定番といえるアイテム「ダウンジャケット」。ヌクヌク暖かく、軽いダウンジャケットは、割とどこにでも着ていける優れもの。
今回は、そんなダウンジャケットが日本国内でどのように浸透していったのか、1970年代までさかのぼり年代別に振り返り&おさらいしていきたいと思います。

ダウンジャケットの振り返り①【1970年代後半】

1970年代後半は、主にアウトドア向けのファッションアイテムが街中では流行。その着られた様を「ヘビーデューティー」と呼ばれていました。

その頃の流行アイテムとして“リュック” “マウンテンパーカー” “ネルシャツ” “ワークブーツ” などは、今でもカジュアルファッションとして定着していますよね。

当時のダウンジャケットは山登り専用のモノがほとんどで、中綿にはダウンやフェザーがたっぷり仕込まれた本格的なタイプから、表生地も今の様にハイテク素材が乏しい時代ということもあり、綿素材や加工が施されていないナイロン素材を中心に製造されていました。

それを街中で着こなせば、モコモコ感たっぷりのボリュームに、ゴワゴワした生地で見た目もかなりワイルドなイメージに。当時、実際にダウンジャケットを着ている人はアウトドア好きに多くみられ、一般的に浸透しているアウターとは言えない扱いでした。

ダウンジャケットの振り返り②【1980年代】

1980年代といえば、日本国内でもアパレルの製造を手掛けたブランド/メーカーが数多く出現した年。各社ともデザイナーの個性や自社ブランドのイメージを前面に押し出す傾向が強くなり、業界全体で激しい競争が繰り広げられていました。

そんななか1985年前後に冬アウターの一つとしてダウンジャケットやダウンを中綿にしたマウンテンパーカー類が登場。

当時はいかに変わったデザインに洋服を仕上げるかが販売戦略の肝。冬のダウンジャケットも一捻り加えたデザインものが数多く見受けられました。たとえば、本体と肩で色分けしたモノからフード部分にファーを備えつけたモノまで、おもに色の使い方、パーツの一部を変える等のデザイン趣向が目立っていました。

しかし、見た目のデザインに工夫を施すにしろ、基本的な中身の素材はそのまま。中綿のボリューム感、寸胴なシルエットには手を加えず1970年代のダウンジャケットをベースに製造されていました。

1980年代当時、冬のアウターといえば「ウールコート」や「綿素材のブルゾン」が主流。ダウンジャケットは他人と違うファッションを楽しみたい、もしくは複数保有するアウターの中の一着としての扱いに過ぎなかったのです。

ダウンジャケットの振り返り➂【1990年代】

1990年代は、それまでの変わったデザイン趣向のブームもひと段落。シンプルで長く着られる洋服が主流となり、無地色かつ洗濯機でも気軽に洗えるパンツ・シャツ類が出回り始めました。

また、海外モノで流行に左右されないデザインと高機能性が評価されはじめ「パタゴニア」や「マーモット」などのアウトドアブランドがもてはやされたのもこの年。その流れから1990年代後半には“ザ・ノースフェイス(THE NORTH FACE)”のダウンジャケットが爆発的に大ヒット。

インナーのTシャツや長袖のシャツに、そのままダウンを羽織るだけというラフな着こなしと、2万-3万と割かしリーズナブルな値段で有名ブランドメーカーのダウンが購入できるという手軽さから一気に大ブレーク。当時、冬のアウターに欠かせないものとしてダウンジャケットが王者の地位を獲得するまでになりました。

ノースフェイスの流行を皮切りに、街中での浸透率も増したダウンジャケットの影響で、それまでのカジュアルアウターの定番だったスタジャン(スタジアムジャンパー)や中綿入りのブルゾン、ピーコート、カバオールのシェアは一気に縮小。暫くの間は息を潜める存在となりました。

ダウンジャケットの振り返り④【2000年代前半】

ノースフェイス製の流行からダウンジャケットの一般認知も進み、抵抗無くファッションアイテムとして受け入れられるようになった2000年代前半からは、各社のアパレルメーカーでもダウンジャケットの取り扱いが急増。

表生地に通気性と撥水性を兼ね備えたゴアテックスを採用したモノから、スーツの上に
も羽織れる表生地にウール素材を採用したモノまで、実に様々な生地素材のダウンジャケットが販売されました。

さらに生地素材に加えて、ダウンの充填量を軽減したモノ、体のライン・シルエットが綺麗にみえるモノ、ロング丈のモノまで形のタイプも様々登場したのもこの頃。同時に、ステンカラーコートやチェスターコート等ビジネス向けのコートをきちんと羽織る人が減ってきた頃でもあり、2000年代前半は全体的にカジュアル化が進みはじめた時期ともいえます。

ダウンジャケットの振り返り⑤【2000年代後半~現在】

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2000年代後半になってもダウンジャケットの勢いは衰えず、モンクレールのような
海外製のブランドで、中には10万円を超す高級ダウンジャケットが登場するほどの人気。

いまどきのダウンジャケットは、高品質で暖かいことはもちろん、毎年発売される新作モノもデザイン性豊富に取り揃えられており、消費者たちを常に魅了し続けています。

また、ファストファッションをはじめとする各メーカーからも「軽量・コンパクト・低価格」をウリに、相当数の種類豊富なダウンジャケットを販売していることからも、今後ひとり一着がダウンジャケットを保有する時代がきてもおかしくないほどの勢いを感じますね。

さらに最近では、薄型のダウンジャケットをインナーとして組み合わせる着こなしが流行る等、エコ化が進むこれからの時代も一層ダウンジャケットの着用用途が注目されます。

ダウンジャケットがどのように進化・一般浸透していったのかを年代別に振り返ってみました。
いまでは冬の定番モノとして着用するダウンジャケットも、時代の流れとともに見た目や生地素材、そして着こなしまでさまざま変化してきたことが分かります。
これからの時代、ダウンジャケットがどう進化し一般消費者に受け入れられていくのか、ぜひ流行の足跡とともに注目したいところです。

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この記事のライター
ヨシカズ
ヨシカズ
DCブランドのコレクター。 MENDYのアンバサダーとして「ファッション」をテーマに執筆活動しています。