「シャツだけでも、1,000枚以上は集めた」 DCブランドを極めるコレクターに、その魅力を聞いた。

今、あなたに「何十年も飽きず、何事にも変えられない趣味」と言えるものはあるでしょうか。おそらく、多くの人が答えられないかもしれません。

若い頃に大好きだった音楽や食べ物も基本的には時代とともに変化していくもの。しかし中には、昔ハマった趣味をいまだに極め続けている方もいます。
今回インタビューした神崎さんもその一人でした。神崎さんが極めたのは、どこか懐かしさも感じる「DCブランド」。
読者の中には、これまで一度は買ったことがある、もしくは実際にコレクションとして集めていたという方もいらっしゃるかもしれませんね。

神崎さんのコレクション数は、シャツだけでも1,000枚以上。実家の倉庫を丸々DCブランドの置き部屋として使っているほどです。

今回は、そんな神崎さんが愛してやまない「DCブランドの魅力」についてお話を伺いました。

気づいたらハマっていた

image1

――早速ですが、神崎さんはいつから「DCブランド」を集めていらっしゃるのでしょうか。

14歳ぐらいからですね。当時は、世間的に「DCブランド」が注目されている時代でした。ですので、「DCブランド」に関しては、流行の波に乗って自然と知っていました。
本格的に「DCブランド」を集めだしたのは、20歳を過ぎてからですね。そこからはどっぷりとハマっていきました(笑)。
バブル真っただ中の当時は、アルバイトの給料も良かったので、大学生ながら稼ぎのほとんどを「DCブランド」に捧げていました。総額にすると、年間でだいたい200万円以上使っていて、20代の10年間でざっと2,000万円くらいは、つぎ込んでいましたね…(笑)

――何かきっかけのような、なにか特別な出来事があったのでしょうか?

高校に入ってすぐに友達のお兄さんに紹介されたんです。その時、今まで礼服のイメージがあった黒を全身に使った全身黒色のコーデや、80年代の象徴となったダボダボに作られたオーバーサイズの服に衝撃を受けましたね。
雑誌やドラマの影響もあって、“30代や40代の大人のオトコ”というものに憧れを持っていたことも少なからずあったと思います。

――衝撃を受けたと言っても、インターネットがまだまだ普及していない時代ですよね。そこからの情報収集はどうされていたのでしょう?

インターネットが今のように普及するまでは、雑誌が情報収集のメインでした。「DCブランド」は、シーズンごとに作られていたので、定期的にお店へ行ってチェックしていました。
そして何度も店へ足を運ぶうちに店員さんとの距離も徐々に近づいて、そのうち自分の趣味を把握してくれるようになっていたので、いい商品が入った時は連絡をもらい、自然と展示会や発注会に招待してもらえるような関係になっていきました。
ただ今は、基本的に仕事が休みの日は、家族サービスに時間を使っているので、そこまで店舗巡りに精力的ではないです。それでも、「コムデギャルソン」、「ヨウジヤマモト」、「ムッシュニコル」などのDCブランドの中でも特に好きなブランドに関しては定期的にチェックして、過去に買えなかった商品をネットで探しています。

趣味だからこそ、好きなままでいれた

image2

――以降、集め続けたコレクションは、自宅の1室や実家の倉庫を埋め尽くすほどあるとのことですが、ご家族の方からは何も文句を言われないのですか。

そうですね。子供たちが大きくなるにつれて、さすがに減らしていこうとは思っています。
ただ、どれも自分が気に入って買った洋服ばかりなので、なかなか手放すことができず…(笑)
妻も「趣味だから」と許してくれています。
もともと洋服が好きな人だったのと、付き合う前から「DCブランド」が好きということは伝えていましたから。
ただ、私が所有している洋服は全てコレクションでは無く、着る気があって買ったものばかりなんですよ。なので、サイズは全てピッタリ。
でもデザインは毎回テーマごとに作られるので、正直購入するペースに着るペースが追いつかなくて…。
実際に買ってから一度も封を開けていない洋服もたくさんあります(笑)

――神崎さんは現在、洋服とは全く関係のないお仕事をされていますが、アパレル業界へ就職しなかったのはどうしてですか。

「DCブランド」に限らず、洋服が好きだったので、大学卒業後はアパレル業界への就職も考えました。
ただ、当時は就職氷河期で…。大卒でいけるとなると、大手のアパレル会社のみだったんですよ。大好きな洋服に携われるわけですから、それでも良かったのですが、当時は本当に好きなブランドで働けないのならば結局意味がないと考えて、アパレル業界への就職は諦めたというか、辞めましたね。
今でも“DCブランドは趣味”として捉えているので、仕事でDCブランドの洋服を着ることはありません。最近は休みになると子供たちと公園で遊ぶことが増えて、ますますDCブランドを着る機会は減る一方です(苦笑)

――将来的にお子さんが着ることになる日も近そうですね!

もちろん強制はしないですが、「DCブランド」の良さを理解して、着てもらえると嬉しいです。
「DCブランド」には、今の洋服には無い魅力や、作り手の思いが詰まっていますからね。大切にしてほしいと思います。

――ちなみに、DCブランド以外の洋服を身につけることもあるのですか。

もちろんあります。
ファストファッションと呼ばれる「ユニクロ」や「無印良品」も着ますし、「ビームス」や「ユナイテッドアローズ」なんかのセレクトショップ物を買うこともあります。
ただ、身につけるものは、やはりほとんどDCブランドですね。素材はもちろん、日本製の手作業で作られているDCブランドの洋服は、今の大量生産・大量消費のファストファッションには無い、素晴らしさが詰まっていますから。

DCブランドが好きで良かった。

image3

――それにしてもこの部屋、すごい量の洋服ですが、管理はどうされているのでしょうか。

実は、木更津(千葉)の実家に15坪ほどの倉庫があって、そこでも管理しています。シャツだけでも1,000枚はありますかね…。
一応ブランドごとに分けて衣装ケースに入れていますが、種類分けしているわけでも無いので、実際にどれを何枚ぐらい持っているのか管理できていません(笑)

――DCブランド好きが高じて得したことなどはありますか。

私と同様にDCブランドが好きな方が全国に数名いらっしゃいます。その人たちとインターネットからの取引を通じて、同じコレクター仲間と知り合えたことですね。
「DCブランド」は1回きりのデザインで、さらに突然店を閉めてしまうので、どの商品も基本無限ではないモノです。1997年ごろまでは、街の古着屋さんでも取り扱いがあったのですが、現在は取り扱っている店がほとんどないんですよ。
だから、あの時買えなかったデザインにもう会えないことが普通でした。
ただまぁ、最近だとネットオークションやフリマアプリなんかの登場で、一部のマニアな人たちの間ではネットを通じた流通も始まりましたけどね。
実際に私も、それらを通じて何人かの本当にDCブランドが好きな仲間たちと知り合うことができました。
コレクター仲間とは、「あの時の服はどうだった」なんて話をします。
ですが、お互い服についての知識は豊富なので、あえて深くは突っ込まず、思い思いの着方で楽しんでいます。

――ちなみに、洋服好きな若者は純粋にモテるイメージがあるのですが、異性に好かれる機会も多かったのではないですか?

DCブランドは彼女がいるときも、いないときも好きでした。なので、特別DCブランドを持っているからといって、モテたい!という気持ちが強かったわけではないですね。
DCブランドの洋服は、どれも個性的なので好き嫌いが分かれるんです。全盛期の当時でも半々くらい。なので、飲み会の席でも洋服の話はあまりしないようにしていましたね。各々が自由にファッションを楽しめるというスタイルがDCブランドの魅力でもあったので。
それでも過去に一度、彼女の服を一緒に買いに行ったことがあります。ただ結果はイマイチでしたね。
それ以降、素材の特長や購入時期(この服はセールまで残っているかなど)なんかを聞かれれば、伝えることはありますが、あまり自分からは干渉しないようにしています。

20年以上もハマり続ける「DCブランド」の魅力とは

image4

――――神崎さんは20年以上もの間「DCブランド」への熱をあげていらっしゃいますが、DCブランド以外にハマったものはなかったのでしょうか。

フランス料理やサッカー観戦、将棋など趣味としては色々なことに挑戦してきました。
それこそ若い頃であれば、周囲もそれなりにファッションに対して興味を持っていましたが、だんだんと周りが卒業していっても、私自身はDCブランド熱が冷めることはなかったです。
音楽とかも、友人から勧められることはありましたけど、どれも特別ハマることは無く、結果的に「DCブランド」だけが残った感じですね。

――なるほど。正直、特に今の若い世代にとって「DCブランド」という言葉は、もはや死語に近い存在のようにも感じます。実際に周りの人たちも次々にDCブランドから離れていく中で、神崎さんが飽きることなくハマり続けるDCブランドの魅力とは何なんでしょうか?

DCブランドが登場したことで、洋服の染め方や素材の製法が格段に増えたと思うんですよ。
それにDCブランドの製品は、基本的にどれも1回きりのデザイン。
自分がDCブランドに出会う前にいだいていたファッションの概念が崩れて、DCブランドからファッションの自由を教わりましたね。
あと当初は、単純にいいものを身につけたいという気持ちが全面的にあったんですけど、コレクションする洋服が増えだしてからは、何歳になっても着られる洋服を買うよう意識するようになりました。
日本製の手作業で作られたDCブランドの洋服は生地がしっかりしているので、他の洋服に比べて長く着られるという利点もDCブランドの魅力の一つだと思っています。
特に今は、自分がいいと思うものを身につけたいという気持ちが強いので、これからもDCブランドの洋服を着ていきたいですね。

――素敵ですね。では今後も神崎さんのDCブランド熱が冷めることはなさそうですね!

そうですね。何年も前の曲なのに、未だに時々聴きたいと思い出して何度も聴いてしまう曲ってあるでしょう。
おそらく日本でこの曲を聴いているのは私だけだろうな、みたいな。「DCブランド」は私にとって、そういう存在ですね。
出来ることなら、棺桶に一緒に入れてもらいたいくらい(笑)
一生涯共にしたいと思います。

【編集後記】
インタビュー中は、神崎さんの可愛らしいお子さんがたびたび「パパかまって」と乱入。
DCブランドの話をする神崎さんの表情は、お子さんに対して優しく接する表情と同じものでした。神崎さんにとって「DCブランド」は、家族同様に大切な存在なのでしょう。

神崎さんのように、皆さんにも大切な存在となる趣味が現れるといいですね。昔ハマっていたものなど、今一度、思い出してみてはいかがでしょうか。

ライフスタイル #趣味 #インタビュー #メンズファッション #DCブランド

この記事のライター
MENDY編集部
MENDY編集部
MENDY編集部の公式アカウントです。