筋肉痛のメリット&デメリットとは?「筋肉痛」の疑問や悩みをプロが徹底解説!

久しぶりに運動をすると、爽快感や達成感が得られる反面、“筋肉痛”というオマケも付いてきます。
そもそも皆さんは、この筋肉痛についてどのくらい正しく認識できているでしょうか?
「どうして痛くなるの?」「何が原因で起きるの?」「早く治す方法はあるの?」など、筋肉痛に関する不安や悩みはいろいろと出てきますよね。

そこで今回は、トレーナーとして日々さまざまな人を指導する筆者が、筋肉痛のメカニズムから筋肉痛が起きることのメリット&デメリット、さらには筋肉痛にまつわるさまざまな疑問までを徹底解説していきます。

筋肉痛とは?

筋肉痛とは?
皆さんが筋肉痛と呼んでいる痛み、正確には「遅発性筋肉痛:Delayed-onset muscle soreness(DOMS)」と言います。

また、筋肉痛は打撲や肉離れなどのように突発的な運動で筋肉に大きな負荷がかかり急性で症状を引き起こすものではなく、トレーニングによってカラダに負荷がかかったことで、およそ12時間~48時間程度経過してから起こる「動作痛」や「圧痛」などとも呼ばれる筋肉の痛みのことを指します。

筋肉痛の原因は? 筋肉痛が起きるメカニズムを解説

筋肉痛の原因は? 筋肉痛が起きるメカニズムを解説
筋肉痛の原因は、過度な負担が筋肉にかかったことで筋線維が傷つき、その筋線維を修復する際に炎症が起こり、同時に痛みのある物質が放出されることによって起こるものと考えられています。
そして、トレーニング後は修復中に起こる炎症が広がるまでに時間を要するため、筋肉痛による痛みが後から遅れて生じてくるのです。

ただし、現実的には筋肉痛が起きるメカニズムはいまだ完全には解明されていません。今のところ筋肉の修復時に起こる炎症による痛みという説が有力ですが、今後の研究によっては新しいメカニズムが発見される可能性もあります。

筋肉痛が起こりやすい動作とは?

筋肉痛は、毎回のトレーニングで必ず起こるわけではありません。運動した後に筋肉痛がこないという人も中にはいるでしょう。
この筋肉痛が起こる・起こらないの違いは、筋肉痛になりやすい動き方が関係しているのです。
ここでは、筋肉痛が起きやすい動作について解説していきます。

・伸張性筋収縮がともなう動作

伸張性筋収縮がともなう動作筋肉が力を発揮する際は、縮みながら力を発揮する「短縮性筋収縮(たんしゅくせいきんしゅうしゅく)=コンセントリック・コントラクション」と、引き伸ばされながら力を発揮する「伸張性筋収縮(しんちょうせいきんしゅうしゅく)=エキセントリック・コントラクション」という2つに分類されます。

例えば、重い物を持つ時は腕の前側にあり肘を曲げるための筋肉である、上腕二頭筋が縮みながら力を発揮しています。これが短縮性筋収縮と呼ばれるもの。

逆に、重い物を下ろす時でいえば筋肉は自ら伸びることができない性質を持っているため、腕の裏側にある肘を伸ばすための筋肉、上腕三頭筋が働いていると思われがちですが、実は物を下ろしていく時も、肘を曲げる筋肉である上腕二頭筋が力を発揮しているのです。
そして、この重い物を下ろす際、上腕二頭筋は物の重さを保持できる最低限の力しか発揮していません。急に物を落とさないよう意識的にブレーキをかけているイメージです。これが伸張性筋収縮と呼ばれるもの。

このように、動作中は「短縮性筋収縮」と「伸張性筋収縮」どちらかの局面が働くわけですが、実は短縮性筋収縮よりも伸張性筋収縮の方が筋線維は傷つきやすく、筋肉痛が起きやすいのです。

その他、伸張性筋収縮には階段を下りる、坂道を下る、ダッシュ時にストップしたり急に方向を変えたりするなども含まれ、筋肉痛が起きやすい動作は、日常生活シーンにおいて数多く存在します。

・慣れていない動作

慣れていない動作しかし、現実的にはただ日常生活を過ごすだけで筋肉痛が起きることってなかなか少ないですよね。それはなぜかというと、その動きに筋肉が慣れてしまっているからなのです。
筋トレなどの負荷をかけるトレーニングもこれと同じ。運動をしていても負荷や動きにカラダが慣れると筋肉痛が起きにくくなるのです。

逆に、普段どんなにハードなトレーニングで鍛えていても、今までにやったことのないスポーツや動きを取り入れると、強い筋肉痛を引き起こすことがあります。
プロアスリートにおいても、自分が専門とする競技以外のスポーツを行うと、当たり前のように筋肉痛が起きます。

つまり久しぶりの運動で筋肉痛が出るのは、けして筋力が弱いことだけが原因ではなく、今までにない刺激が筋肉に加わることの反応であると理解する方が正しいでしょう。

筋肉痛のデメリットとは?

筋肉痛のデメリットとは?
筋肉痛のメカニズムを理解したところで、今度はこの筋肉痛が起こることによって、具体的にどのようなデメリットが生じるのかについて確認しておきましょう。筋肉痛によるデメリットは大きく分けて3つ考えられます。

(1)痛み

筋肉痛に悩まされる人に最も大きなダメージを与えること、それは間違いなく“痛み”によるデメリットでしょう。ほんの少し力を入れただけで痛みをともなう動作痛や、触ることによって痛みが生じる圧痛などは筋肉痛の代表的な症状と言えます。
また、運動自体は苦にならなくても、カラダを動かした後に生じるこの筋肉痛の痛みが嫌いなどを理由に、トレーニングやスポーツをほとんどしないという人も少なくありません。

(2)可動域の制限

筋肉痛の痛みが原因でトレーニングに及ぼすデメリット、それはずばり関節の可動域を制限してしまうことです。
筋肉痛になった後はいつも以上にカラダを大きく動かせない…と感じる人も多いでしょう。
これは、関節を広げた時に筋肉痛の箇所に痛みが生じること、また筋肉痛によって筋肉の緊張が高まっていることが主な要因として挙げられます。

(3)筋力の低下

筋肉痛は、関節可動域の制限同様に発揮できる筋力の低下も招きます。
例えば、筋肉痛が残った状態のままスポーツジムなどで筋トレをしようとしても、思うように高重量を扱えず強度が低くなってしまう…という経験をしたことのある人もいるでしょう。
これは、筋肉痛による筋力低下が主な原因です。

筋肉痛のメリットとは?

筋肉痛のメリットとは?
デメリットの多い筋肉痛も、人によってはメリットに捉えられることもあります。

例えば、強烈な痛みがともなう筋肉痛ですが、運動や筋トレに慣れることで、翌日以降の筋肉痛が逆に心地よく感じる人も少なくありません。
特に、普段からマメにトレーニングを行う人の場合は、翌日の朝に筋肉痛を迎えると、「前の日はしっかりカラダを鍛えることができた!」と満足感を得られますし、逆に筋肉痛が出ないと「鍛え方が足りなかったかな…」とちょっとガッカリしてしまいます。

筋肉痛は、カラダが成長しているという証のようなもの。
つまり、筋肉痛を期待してしまう状態になったら、きちんとトレーニング習慣が身についてきた証拠と言えます。

ただし、いくら筋肉痛が出ているからといって、トレーニング効果が高いというわけではありませんので、くれぐれも勘違いしないように気をつけましょう。

筋肉痛の「疑問」をQ&A形式で紹介!

筋肉痛の「疑問」をQ&A形式で紹介!
ここまでは、筋肉痛による痛みの原因や発生するメカニズム、そしてメリット&デメリットなど筋肉痛の基本を中心に解説してきましたが、ここからは、筋肉痛に関してよく挙がる疑問をQ&A形式で紹介していきます。

【Q1】筋肉痛が回復する時間はどれぐらい?

【A】一般的に筋肉痛は48時間~72時間の間で解消されていくことが多いです。その回復期間が、カラダが成長する「超回復」が起こる休息期間と同じのため、筋肉痛を超回復の目安としている人も少なくありません。

また、筋肉痛の回復期間は痛みの強さや個人差によっても異なりますが、長くても1週間程度で痛みを感じなくなるまで回復するケースがほとんどです。

ただし、痛みがなくても力が発揮しにくいなど、痛み以外の影響が残っている場合もありますので、筋肉痛後にトレーニングをする際は、自分のカラダの状態をしっかりチェックしてから行うようにしましょう。

【Q2】筋肉痛の痛みを和らげる応急処置はある?

【A】筋肉痛が辛すぎる…そんな経験がある人もいるかもしれませんが、残念ながら、筋肉痛をすぐに解消する方法はありません。

もし「痛すぎて寝れない…」「仕事に集中できない…」など日常生活に支障をきたし、どうしても早期回復させたい場合は、やはり薬の力に頼るしかないでしょう。
外用鎮痛消炎剤の塗り薬や貼り薬によって炎症を抑えたり、睡眠を妨げるようであれば鎮痛剤を服用したりすることも検討しましょう。

【Q3】筋肉痛を早く治す方法はある?

【A】筋肉痛の痛みを早期になくすには、大抵「痛いのだから、じっと安静にしていた方がいい」と考えるものですが、実はその逆です。筋肉痛の痛みが出ている時こそ、軽い運動でカラダを動かした方が筋肉痛の痛みを早く解消させられるのです。

ウォーキングや軽い負荷の筋トレ、またお風呂に入ってカラダを温めたり、寝る前にストレッチしたりすることで、カラダ全体の血行が良くなり、代謝の高まりとともに筋肉痛からの回復を早められるでしょう。

【Q4】筋肉痛にならない対策方法はある?

【A】残念ながら、100%筋肉痛を防ぐ方法はありません。ただ、翌日以降に生じる筋肉痛の痛みを少しでも軽減させるための対策方法はあります。

それは、運動前や運動直後のカラダのメンテナンスを抜かりなく行うことです。運動前後にウォーミングアップやクーリングダウンをしっかり行い、ストレッチなどで筋肉の状態を整えておくことで、筋肉痛によって生じる痛みを抑制する効果が期待できます。

【Q5】筋肉痛を和らげるうえで、運動前後は具体的に何をすればいい?

【A】運動前は、汗ばむ程度にカラダを動かしながら行うダイナミック・ストレッチを、運動直後は、止まった状態でゆっくりカラダを伸ばしていくスタティック・ストレッチを行いましょう。

また、運動直後は筋肉も熱を持ち炎症します。たとえその瞬間に痛みが発生していない場合でも、運動で酷使した筋肉は念入りにアイシングをして、炎症を抑えるようにしておきましょう。

アイシングの仕方はいたって簡単。氷枕(こおりまくら)やビニール袋に氷水を作り、熱を持った箇所の筋肉に当て10~20分程度冷やすだけでOKです。
ちなみに、アイシングは運動直後に行うのが最適なタイミングです。逆に、筋肉痛の痛みが発生した後にアイシングをしても効果は薄いということを覚えておきましょう。

【Q6】筋肉痛の時はトレーニングしても大丈夫?

【A】筋肉痛の時にトレーニングをすること自体は全く問題ありません。ただし、トレーニング効果という観点から見ると避けるべきと言えるでしょう。

理由としては、筋肉痛の痛みや可動域の制限によってトレーニング全体の強度・質が低下してしまう恐れがあるからです。また、普段のトレーニングと違った動きに本人がイライラしてしまい、ケガや筋肉を傷める危険性も考えられるでしょう。

どうしても毎日トレーニングをしておきたいという方は、筋肉の部位毎にトレーニングのメニューを設計し、筋肉痛の痛みがある期間は、筋肉痛の痛みがともなわない部位を鍛えるようなプログラムを組みましょう。

【Q7】筋肉痛になった時のストレッチ効果はある?

【A】強く筋肉痛が出ている時にストレッチをしても、痛みの軽減には繋がりません。
しかし、筋肉痛の痛みがだいぶ引いてきた…というタイミングでストレッチをすれば、筋肉の緊張を和らげ、回復を早める効果が期待できます。

ただしその際、グイグイ押して行うストレッチや、反動を使ったストレッチは逆効果。同じ姿勢を保ちながら、ゆっくりと筋肉を伸ばすスタティック・ストレッチを行いましょう。

【Q8】筋肉痛の時の食事はどうすればいい?

【A】筋肉痛になった時の食事はどうしたらいいの?と、回復や効果の観点から気になる人は多いと思います。

まず勘違いしないでおきたいのは、栄養摂取によって筋肉痛の回復が遅れたり早まったりすることはありません。
しかし筋肉痛が起こっている最中は、筋肉が修復・再生しているタイミングと言えます。その時に、筋肉の元となるタンパク質を多く摂取しておくことは、筋力アップに大いに役立つでしょう。また、筋肉の再生を促すBCAAや、疲労回復の効果が期待されるクエン酸を摂取することもオススメです。

【Q9】筋肉痛にならないと筋トレの効果はない?

【A】筋肉痛になる・ならないは、筋トレの効果に直接的な影響はありません。強い筋肉痛が出たから効果が高い、筋肉痛が出ないから効果が低い、というわけではないのです。

低強度のエクササイズを長時間行えば、強い筋肉痛が起こる可能性は高いでしょう。しかし低強度のエクササイズでは、筋力の向上や筋肥大は起こりにくいのです。また、筋肉痛の出やすいトレーニング、出にくいトレーニングというものもあります。

あくまで筋肉痛の発生は参考程度に留めておき、トレーニング中に扱う負荷の重量設計によって筋トレの効果を狙っていきましょう。

【Q10】筋肉痛が治らない…どうすればいい?

【A】筋肉痛がなかなか治らないという人は、遅発性筋肉痛ではない場合が考えられますので十分に注意が必要です。

筋肉痛はどんなに強い痛みでも長くて1週間前後で解消されるもの。もし1週間以上筋肉痛の痛みが続く場合は、肉離れなどの筋損傷やケガをしている可能性も考えられます。
運動をした翌日以降あまりにも筋肉の痛みが長期間続くようであれば、医療機関で診察してもらうようにしましょう。

肉体改造に筋肉痛はつきもの!

いかがでしたか。筋肉痛について少しは理解できたでしょうか。
筋肉痛は、決して悪いことばかりではありません。多少の痛みこそ伴いますが、ケガとは全く異なるのです。
もちろん、運動後も筋肉痛が出ないことに越したことはないでしょう。しかし、トレーニングや運動にハマると、逆に筋肉痛が起こらないと不満に感じてしまう時もあります。
事実、筆者自身も筋トレ後は筋肉痛を期待してしまいます。
カラダの成長には筋肉痛がつきもの。筋肉痛と上手に付き合い、筋肉痛を楽しみながら肉体改造に励みましょう!

健康・メンズ美容 #筋肉痛 #トレーニング #筋トレ

この記事のライター
和田 拓巳
和田 拓巳
プロスポーツトレーナー歴16年。 プロアスリートやアーティスト、オリンピック候補選手などのトレーニング指導やコンディショニング管理を担当。治療院での治療サポートの経験もあり、ケガに関する知識も豊富でリハビリ指導も行っている。 医療系・スポーツ系専門学校での講師や、健康・スポーツ・トレーニングに関す...