意外と知られていない「体幹」が弱い人のデメリット6つ。プロが教える「体幹」が担う役割とは?

プロアスリートがトレーニングに導入していることで一躍ブームとなった「体幹」の筋トレ。
ただ中には、プロのスポーツ選手が体幹を鍛えるのは理解できても、わざわざ一般の人たちが体幹のアリ/ナシを気にする必要ってないのでは…?などと疑問に思う人もいるかもしれません。
しかし、実際はこの体幹部の筋力が弱まることによって、普段の日常生活に何かと悪影響を及ぼす危険性があるのです。

今回は、カラダの「体幹」が担う役割、そしてこの体幹の弱い人が陥る日常生活のデメリットについてご紹介したいと思います。特に日頃から運動不足の人は、自分でも気づかないうちに体幹が衰えてしまっているかもしれません。

体幹とは?

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まずはじめに、体幹についての知識を深めておきましょう。

そもそも「体幹」とは、カラダのどこの部分を指しているのかご存知ですか?
体幹の定義については、様々なトレーニング団体が各自に定めている場合もありますが、基本的には首から上と腕・脚の四肢を除いた胴体部分のことを「体幹」と言います。
体幹というと、お腹まわりの部位をイメージしていた人も多いかもしれませんが、実は胸も背中も体幹に含まれますし、表面の筋肉だけではなく関節周りにある深部の筋肉も体幹に含まれます。


実際のところ体幹に含まれる筋肉の部位は数多く存在し、胸の筋肉「大胸筋(だいきょうきん)」、背中の筋肉「広背筋(こうはいきん)」・「僧帽筋(そうぼうきん)」・「脊柱起立筋(せきちゅうきりつきん)」、お腹の筋肉「腹直筋(ふくちょくきん)」・「外腹斜筋(がいふくしゃきん)」・「内腹斜筋(ないふくしゃきん)」・「腹横筋(ふくおうきん)」、お尻の筋肉「大臀筋(だいでんきん)」・「中殿筋(ちゅうでんきん)」、骨盤周りの深部にある「大腰筋(だいようきん)」・「腸骨筋(ちょうこつきん)」などなど、ざっと大きなものだけを挙げてもこれだけの筋肉があります。そのほかに小さな筋肉も多数あり、それらの筋肉で体幹を構成しています。

体幹の役割とは?

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体幹部には背骨や骨盤・肋骨・肩甲骨など、カラダを動かすための関節が多数存在しています。

そして、基本的に関節まわりの動きは靭帯で最低限固定されていますが、複雑な人間のカラダの動きを生み出すためには、動かしたいところは動き、固定したいところはしっかり固定するという、体幹部についている筋肉量とそのバランスが決め手となり、体幹自体がその役割を担います。
そのため、体幹部についている筋肉量と柔軟性のバランスが崩れると、各関節まわりをはじめとしたカラダ全体にさまざまな支障やトラブルなど、悪影響を及ぼす可能性があるというわけです。

またそれ以外にも体幹部の役割としては、体内にある内臓を正しい位置に保ち、同時に守る働きも担っているため、生命活動を維持していく上でも大変重要かつ欠かせない存在でもあるのです。


ではここからは、具体的に体幹の弱い人が陥る日常生活のデメリットについて見ていきましょう。

デメリット①|姿勢が崩れやすくなる

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まず体幹が衰えることにより、姿勢を保つ機能が低下し姿勢が崩れやすくなるというデメリットがあります。特に体幹の中でも腹筋まわりの筋力は、姿勢維持のために重要です。

正しい姿勢を保っていられるのは、腰部の筋肉が常に筋力を発揮し重力に対抗しているからですが、腹筋群の筋力が弱くなることによって腹筋の圧力“腹圧”が低下してしまいます。腹圧が低下すると、姿勢を正す力が弱くなり腰部にかかるストレスが増してしまうことで、ストレスを逃がすために無意識に姿勢を崩してしまうのです。

また姿勢保持のために重要な腹筋群は、日常生活の中で使われる機会が少なく、意識的に鍛えないとどんどん弱くなってしまうため、運動不足の人は特に姿勢が崩れやすくなります。
さらに、胸の筋肉と背中の筋肉の筋力・柔軟性のバランスが崩れることによって、肩が内側に入りいわゆる“猫背”と呼ばれる、立っている時や歩いている時、またイスに座っている時など常にだらしない体勢が居心地よく感じられ、自分のクセとして身についてしまう危険性もあります。

これらの姿勢の乱れは、単に見た目の悪さだけではなく様々なデメリットを引き起こす原因になるのです。

デメリット②|お腹が出やすい

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体幹の筋力が弱まり姿勢が崩れることで、ポッコリお腹が強調されやすくなります。これは腹筋群を支える体幹が衰えることで、それまで内臓を内側に抑えていた力が弱まり、お腹が前に突っ張りやすくなることによって生じる症状。
またこの症状は、猫背の姿勢になることでより一層強調されて見えてしまいます。

有酸素運動のトレーニングをしてもなかなかポッコリお腹が改善されない…という人は、もしかしたら体幹部の筋力不足が原因かもしれません。

デメリット③|疲れやすくなる

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体幹をはじめとした筋力の低下・弱さは、カラダの疲れを感じやすくなる原因の一つ。
これは重いものを持ち上げたり、荷物を運んで移動する時など力を発揮する場面に限らず、立ちっぱなしや座りっぱなしなど、ジッと停止している状態の時にも疲労を感じやすくなってしまいます。

さらに姿勢が悪くなることによって関節にかかる負担は増え、筋肉の張りをより一層感じやすくなってしまいます。

デメリット④|日常のパフォーマンスが低下する

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体幹部は大きな力を発揮するうえで重要な役割を担います。
本来、“力”というものは下半身で地面を踏ん張り、その反動を体幹から上半身へとつなげていくことによって力強いパフォーマンスが生まれます。
たとえば足元がグラつく状況や地面が不安定なシーンにおいては、なかなか強い力を発揮することは難しいですよね。
野球のピッチング動作も、サッカーの力強いシュートも、バスケットボールやバレーボールの高いジャンプも、下半身で生み出された力がもとになっているのです。

つまりは、下半身と上半身をつなぐ体幹部が衰えれば、せっかく生み出された強い力もカラダの軸がブレてしまうことによって、効率よく上半身に伝わりません。

だからこそアスリートは、トレーニングを重ね熱心に体幹部を強化するのです。

この現象は日常生活においても同じことが言えます。重いものを持ち上げる時や階段を駆け上がる時、とっさに走り出す時など、体幹は全身に力を伝達する役割を担います。
もし気持ちにカラダがついていかない…と感じる人は、この体幹部が弱まっていることが原因かもしれません。

デメリット⑤|バランス感覚が悪くなる

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体幹が衰えると、カラダの軸が安定せずバランス感覚が悪くなってしまいます。

たとえば電車へ乗った時に急な揺れが生じた場合においても、体幹が強ければ瞬時にカラダの重心を安定させバランスを取り戻すことができますし、片足立ちで靴下をはいたりする時も普段から体幹を鍛えていれば、片足立ちでもフラつかずしっかり上半身の姿勢を保つことができるでしょう。

体幹が強いというのは、どんな環境においてもカラダの軸を安定していられるということ。

また、たとえ軸がブレても瞬時に立て直すことができますので、純粋にバランス感覚が優れているとも言えるでしょう。

このバランス感覚を作り出すのは、間接まわりの深部に存在し、主に関節の動きを固定するための働きをする小さな筋肉群たち。それらの深部に存在する筋肉群のことを『インナーマッスル』と呼びますが、そのインナーマッスルの筋力が低下すれば、自ずと関節まわりを固定する力が弱くなりカラダの軸がブレやすくなってしまいます。

特に運動不足の人は、このインナーマッスルの筋力が極めて弱い傾向にあると考えられるでしょう。
深部にあるインナーマッスルの筋肉を鍛えるためには、日頃から意識的かつ継続的にトレーニングへ取り組むことが大切です。

デメリット⑥|腰痛の原因になりやすい

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そして体幹の衰えによって生じる姿勢の悪さ、疲れやすさ、バランス感覚が悪くなるなどのデメリットが積み重なって起きる症状が腰痛です。

ビジネスマンをはじめ多くの人たちを悩ませる腰痛は、主に筋肉の過緊張(疲労)がきっかけで生じる「筋・筋膜性腰痛(きん・きんまくせいようつう)」が、根本的な原因の多数を占めています。


この筋・筋膜性腰痛とは、単にどこか筋肉の一部が損傷しているわけではなく、体幹の衰えによって姿勢やバランス感覚の悪さが直に腰部へかかる負担を大きくし、筋力が低下した影響でカラダが疲れやすくなり、その影響がダイレクトに筋肉の緊張を高めることによって生じる症状。
特に腹筋をはじめとした腹圧の筋力低下は、脊柱起立筋など腰部の筋肉に与えるストレス負荷を高め、過緊張を引き起こしてしまう最大の原因になります。

反対に、普段からマメに腹筋を鍛えて腹圧を高めておけば、腰部にかかるストレスは減少し、腰痛を改善・予防することができるでしょう。

体幹部を強化することで、これらのデメリットを一気に改善することができます。
また、しっかりエクササイズを行うことで筋肉にかかる緊張も解消され、その分柔軟性も高まりますので、腰痛などの予防策としても効果的です。

ちなみに体幹を鍛えるためには、“体幹トレーニング”と呼ばれるポーズをとって姿勢を安定させるトレーニングが有名ですが、実はダンベルやバーベルを使ったフリーウエイトのスクワットやデッドリフトなど、通常のエクササイズでも体幹を鍛えることは可能。
腹筋まわりに限らず、カラダ全体を動かすことも体幹を鍛えるいい刺激になるからです。

体幹の衰えによって、日常生活に支障をきたさないよう、体幹部も抜かりなく鍛えておきましょう。

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この記事のライター
和田 拓巳
和田 拓巳
プロスポーツトレーナー歴16年。 プロアスリートやアーティスト、オリンピック候補選手などのトレーニング指導やコンディショニング管理を担当。治療院での治療サポートの経験もあり、ケガに関する知識も豊富でリハビリ指導も行っている。 医療系・スポーツ系専門学校での講師や、健康・スポーツ・トレーニングに関す...